わたしは一生忘れない!黒島の自然に魅入られた日

私が、黒島の自然に最初に魅入られた日の話をしよう。
私がTabi&Coco創業メンバーとして今まで続く黒島トレッキングツアーなどを主催している由縁でもある。

今から7年前。それは、「第1回アイランドトレイル2days黒島」に参加し、初めて黒島に降り立った日でした。

平成23年10月29日 午前7時40分港発から乗船1時間45分後、
フェリーから眺めたのが初めてみた黒島である。

船から海上に黒点でしかなかったものが、鳥影のようになり、ズームカメラのようにはっきりと島影となってくる。
平地がなく急に岩壁となり、続いて椎や樫の木々に覆われて鬱蒼とした山が海に突き出すように迫ってくる。
木々の下は濃い緑の葉の陰になって黒く見える。
「黒島は黒葉島」とも呼ばれる所以だ。私は反射的に「みどりの黒髪」とことばが出た。
海風に揺られてさわさわと葉っぱがなり、みずみずしく、清々しく感じたからだ。

黒島は黒葉島

それでは、ここからアイランドトレイル2days黒島の参加を通して経験した黒島を紹介したいと思う。

アイランドトレイル2days黒島

第1回アイランドトレイル2days黒島は、
1日目27.5km、2日目23.6km 2日間合計51.1kmのタイムを競うレースで、周囲15.2kmの小さな島で開催されたトランジスタ型の起伏のとんだコースであった。

1日目は海抜0メートルから約450m位まで駆け上がり、また降りて来てまた駆け上がるという27.5kmの過酷?なレース。

2日目は片泊港をスタートして島の外周道路を一周する23.6kmのなだらかなコースだ。
私は参加したものの、アスリートではない。
全く自分の走る能力では無理だということを忘れていた。

アイランドトレイル2days黒島は他の地域でのトレイルランと違ういくつかの特徴があった。

  1. 離島で2日間にわたり総合を競うレースは日本で最初のレース。
  2. 参加者は離島のレースなので島から出られない。よって寝食も全員共にしなければならない。同じ釜の飯を食うことになった。
  3. エイドステーション無し、すべては参加者自身が自給自足で臨んだ。
  4. 夜は、島民も参加しての歓迎大BBQ大会が開催された。

(夕食も兼ねるので強制参加。)

黒島アイランドトレイル初日。島民の歓迎・応援のなか、トレイルからトラッキング~自然に圧倒される

黒島・片泊港9時40分着、港には多くの島民が歓迎で来ていた。
「レースは50分後、10時30分より港からスタートします」と案内され、参加者全員にざわめきが起こる。「どこどこ?」まさしく海抜0mの岸壁がスタートです。

10時30分、三島村長の号砲で1日目のレースが始まった。
平坦な岸壁を50m位の走りは軽快であったが、そこを過ぎると村に続く傾斜角20度近い急坂に突入、約200m位それが続くと片泊地区のメイン通りにさしかかる。この辺りから5度~10度位傾斜の坂に変わる。

道沿いには家々が立ち並び、海からすぐの場所にありながら山間の風景に近い。初参加であり、島民の応援もある。

まだ歩くわけにはいかない。

応援が全く見えなくなったことを確認して歩きに変わった。
もうトレッキング状態だ。

周りの景色を見る余裕も出てきた。

船から鬱蒼と見えた島も、近づいて見るとどこにもある草木が覆う。
黒島で唯一の県道を時計回りで大里方面へしばらく走る。

右手に急峻な山肌が迫り、左手にも急峻な崖が海に突き刺さるように続く。

ススキの穂は垂れているのにまだ葉は青々とし、芙蓉も緑の葉の上に白やピンクの花を咲かせている。

ここの草木はまだ夏の様相を呈していた。

県道をそれて、山頂近くの折り返し点に向かって山道に入る。行く手を阻むように大名竹が道路を遮るようにまだらに続く。
芙蓉は自生しており山道沿いに花が咲き、足元にはツワの花が満開で途切れることなく咲いている。

そればかりではない。
ツワの花々に南下中のアサギマダラが群舞している。
その中を走る。目に映る光景は表現しがたい。

自然と気分はハイになっている。

  

島の中央部に聳える櫓岳(622m)、横岳(5910m)の登山口、海抜450mまで走り登りきると、山道が交差している場所につく。

そこからまた一気に片泊地区まで駈け下りる。
そして今度は島の中央稜線添いの山道を先ほどの450mまで駆け登る。

県道沿いから急峻に見えたその山の中をトレイルする。
行く手左側は木々が立ち並び、海はまばらにしか見ることができない。右手に見る山肌は大小の岩がゴツゴツとむき出て、今にも落ちてきそうである。

かつては林道として使われていたのであろうが、今は往時の面影を感じることのできない山道となっている。

島内は車の通る道はほとんど舗装されているが、このルートの上層約1.5kmは未舗装で本当のトレイルである。

中央部の交差した山道を今度は片泊地区と反対にある大里地区に向かって走る。交差地点からしばらくだらだらと登り坂が続く。約500mの未舗装道路を走っていると急に目前が開ける。

急峻な山の傾斜の下になだらかな牧場が広がる。

その下には大里地区集落が見え、その向こうに海原がどこまでも続く。

最高のロケーションだ。

いっぺんに疲れはとんだ。しばらく駆け降りると牧場に囲まれた道になる。ところがいつも見慣れている風景ではない。

近づくと高さ1mも満たない女竹(メダケ)や大名竹が一面に広がり、放牧された牛が美味しそうにのんびりと食んでいる。

牧草でないのに驚いた。

ここで育てられた子牛は鹿児島のセリ市場でも健康でたくましいというので高く競られるらしい。
これから先は下りかと思うとがぜん元気が出てきた。
牧場を過ぎると道路沿いに大名竹や女竹の群生の中をしばらく駆け降りる。
竹の隙間からわずかばかりの畑地が見るとそこにはまだ収穫されていないからいものつるが生い茂っていた。

大里港近くまで駆け降りてくると、川の流れる音がする。
黒島はいたるところに川があると聞いていたが初めて川に気づいた。

港入り口から大里地区の中心へコースは入る。ゴールまで再び300m位の上り坂が続く。
ここにも別の小川が道の横を海に流れ落ちていく。

スタートの片泊地区を抜ける時もきつい上り坂だったが、大里地区もゴールまでこれまた勾配10度以上もありそうな登り坂である。

大勢の島民の声に押されて歩くわけにはいかない。へとへとになりながらも15時頃ゴールした。
制限時間までにはまだ余裕があった。

ゴール近くでは垣根として植えられているマツリカが満開で迎えてくれた。
10月を終わろうとしているのにまだここでは咲いていた。

まるで白と紫の2色の花が咲いているようだ。真っ白い花を咲かすので純粋無垢という花ことばがある。
この2018年9月8日に黒島に落成したみしま焼酎 無垢の蔵、名前に何か因果を感じる。

自給自足の飲み物や食べ物は、最後まで手付かずのままリックに残り、重い荷物を背負ったままにゴールした。
途中、開けて食べる元気がなかったことと、あちこちに自然のエイドステーションがあったからだ。山水はミネラルたっぷりで美味しかった。

夜は、大里地区の方々の歓迎で、片泊地区民も参加した選手と島民との交流大BBQ大会で盛り上がった。
今日のレース結果、総合入賞に届かない参加者はあすのレースの入賞をあきらめて飲み食いに情熱を注ぎ、島民と交流におおいに盛り上がっていた。

島民との交流大BBQ大会

黒島アイランドトレイル2日目。ハイタッチロード~一生忘れない思い出

さて、2日目は片泊港発、時計と逆回りで島内一周23.6kmのコースが9時30分にスタートした。
途中には塩手鼻観音までの折り返しコースがある。
女竹が道の左右から通行を妨げるようにこうべを垂れ、地面はあちこちからの湧水でツルツルすべり走りにくい。
早いランナーと行違うときに、タッチされて「ガンバレ!」とエールがある。ここを私は「ハイタッチロード」と名付けた。

昨日と違うのは、割と起伏のない村道を走る。島民にとっては大里地区と片泊地区を繋ぐ大事な村道だ。しかし似たような景色が続く。

そのうちに周りの景色に飽きがきて、鳥やトンボ、チョウなどに目が行くようになった。

さて、昨日と違うのは13時までにゴールし、表彰式、閉会式などを済ませて、14時45分片泊港発枕崎港行のフェリーに乗船するというスケジュールだ。

よって本日は制限時間は13時である。

私はゴール1km手前で13時となり、車に強制収容されていた。

昨日のレースから前後していたランナー達と収容車ごとゴールテープを切るはめになった。
黒島の自然のすごさを十分に味わうことができたことと強制収容されたことを私は一生忘れない!

黒島アイランドトレイルまとめ

第6回大会まで続いたアイランドトレイル2days黒島は2018年の今は中止となっている。
当時行われていた鹿児島~竹島~硫黄島~黒島~枕崎の1日航海鹿児島・枕崎間の試験運行が無くなったこと船の運航状況から2泊3日の大会にならざるを得なったためだ。

またいつか復活することを願っているアイランドトレイル3days黒島として!

初めて訪れた黒島が強く印象に残り、私の現在も続く黒島参りが始まった。

今回はこれぐらいにしましょう。【カッチン】

焼酎好きなあなたに...

人口200人の離島で作られた
希少な芋焼酎を試してみませんか?